はじめに
序論
第I章 受難と受難曲の歴史――バッハまで
受難と十字架
イエスの活動と死
福音書の受難記事
四つの福音書
朗誦される受難記事
多声化の始まり
ルネサンスの応唱風受難曲
ルネサンスの通作受難曲
宗教改革初期のルター派受難曲
応唱風受難曲のバロックにおける発展
オラトリオ受難曲の成立と発展
一八世紀初めのライプツィヒにおける受難曲
第II章 《マタイ受難曲》の資料と作曲年代
バッハの《マルコ受難曲》
《ルカ受難曲》をめぐって
《ヴァイマル受難曲》
《ヨハネ受難曲》の変遷
《マタイ受難曲》の資料――自筆総譜
オリジナル・パート編
初稿を伝える『アルトニコル筆写譜』
《マタイ受難曲》の作曲年代――修正された通説
リフキンの新説
初演時の《マタイ受難曲》
《ケーテン候のための追悼音楽》との関係
第Ⅲ章 ピカンダーによる自由詩
ピカンダーの役割
二つのキャラクター
歌詞の構成
詩人ピカンダー
ピカンダーの評価
第IV章 歌詞のルーツを探って
自由詩の背後にあるもの
ルター派神学とバッハ
八一冊の神学書コレクション
蔵書を開いて
コレクションの内容
ミュラーとランバッハ
蔵書研究の問題点
第V章 受け継がれるコラールの伝統
聴き手に訴えるコラール
コラールの誕生
《マタイ受難曲》におけるコラール
ゲールハルトの受難コラール
和声化されるコラール
本論
第I章 花婿が、子羊のように―冒頭合唱曲の世界 〈第1曲〉
大胆な導入
花婿のたとえ
雅歌のメッセージ
子羊の婚姻
コラール
導入部の分析
応答する合唱楽節
第II章 受難の預言 〈第2曲―第4曲b〉
聖書場面の始まり
通奏低音と「光背」
コラールの介入
祭司たちの謀略
第Ⅲ章 香油を注ぐ女 〈第4曲c―第6曲〉
ベタニアにて
香油を注いだのは誰か
マグダラのマリア
もう一人のマリア
福音書記者の調和
バッハの聖書場面
注がれる涙
愛ゆえに
目に見える歌詞の表現
感情を扱うやさしさ
ダ・カーポ・アリア
第IV章 血を流すイエスの心 〈第7曲―第8曲〉
密告者の出現
血を流すのは誰か
母なるイエス
痛ましさの表現
ロ短調の使用
いくつかの演奏
第V章 最後の晩餐 〈第9曲―第13曲〉
過越祭の喜び
裏切りの告知
ラビよ、私ですか?
パンとぶどう酒の意味するもの
涙の海で味わう喜び
神学論争に代わるアリア
第VI章 オリーブ山にて 〈第14曲―第17曲〉
バッハはイエスの十字架?
復活の預言
受難コラールの介入
ホ長調の役割
つまづきの預言
受難コラールの再現
第Ⅶ章 ゲツセマネの園の苦悩 〈第18曲―第25曲〉
悲しみの始まり
雷の子らの野心
痛ましいおののき
イエスのもとでの目覚め
ヤコブのはしご
ひれ伏し、祈るイエス
苦い杯
眠る弟子たち
第Ⅷ章 捕縛 〈第26曲―第29曲〉
ユダの接吻
ヨハネ福音書の対応箇所
二重唱に合唱が加わって
このタイミングでこそ
争わぬイエス
大コラール楽曲の導入
整然とした構成
復活を見据えて
第IX章 イエスを探す美女 〈第30曲―第37曲〉
対話する美女たち
疑問文がアリアに
大祭司邸での審問
苦しい証言
沈黙するイエス
四音符の表現力
引き出された涜神の言葉
第X章 明暗を分けた悔い改め 〈第38章―第42章〉
〔その一〕 ペトロの否認
浮かび上がるペトロの姿
三つの応答
良心を目覚めさせる鶏鳴
まなざしの溶かす涙
アリアへの視点
隠された受難コラール
コラールによる意味づけ
〔その二〕 ユダの自殺
後悔するユダ
明るいアリアの侵入
「私」とは誰か
放蕩息子としてのユダ解釈
ユダの復権
ランバッハのユダ論
第XI章 流れ下る愛 〈第43曲―第49曲〉
「心臓部」の仮説
血の畑の由来
王の称号をめぐる対話
受難コラールのヴァリエーション
バラバを!
驚くべき刑罰
良き行いの数々
清らかな愛
愛の表象のルーツ
愛とは何か
第XII章 血にまみれた十字架 〈第50曲―第58曲〉
血の報復
鞭打ち
内面化される鞭打ち
着想の源泉
ユダヤ人の王様
血と傷にまみれた御頭
十字架の道行
甘美なる十字架
ゴルゴタへ
私は神の子だ
第XIII章 イエスの死 〈第59曲―第63曲b〉
鳴り響く弔鐘
手を広げるイエス
覆う暗闇
消えた光背
詩篇の引用?
ルター正統派の立場
なぜ対訳か
追悼のコラール
地震の描き方
地震の数象徴
神の子の認識
浮かび上がる十字架
I・N・R・Iの銘
天変地異の語ること
ランバッハの天変地異論
第XIV章 おのが心への埋葬 〈第63曲c―第68曲〉
たたずむ女性たち
夕暮れ、涼しい時
そよぐオリーブの葉
おのが心を墓として
キリスト哀悼の情景
悩める良心の憩い
補章 レコード/CDによる演奏の歴史
1 ハンス・ヴァイスバッハ指揮 ライプツィヒ放送交響楽団(一九三五年)
2 ウィレム・メンゲルベルク指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(一九三九年)
3 ギュンター・ラミーン指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(一九四一年)
4 レジナルド・ジェイクス指揮 ジェイクス管弦楽団(一九四九年)
5 ヘルマン・シェルヘン指揮 管弦楽団(一九五〇年)
6 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(一九五四年)
7 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(一九五八年)
8 フリッツ・ヴェルナー指揮 プフォルツハイム室内管弦楽団(一九五九年)
9 オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団(一九六一年)
10 レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック(一九六三年)
11 カール・ミュンヒンガー指揮 シュトゥットガルト室内管弦楽団(一九六四年)
12 オイゲン・ヨッフム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(一九六五年)
13 ハンス・スワロフスキー指揮 ウィーン国立管弦楽団(一九六〇年代)
14 モーゲンス・ヴェルディケ指揮ウィーン国立歌劇場管弦楽団(一九六八年)
15 ヴォルフガング・ゲネンヴァイン指揮 コンソルティウム・ムジクム(一九六八年)
16 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(一九六九年)
17 クラウディオ・アッバード指揮 イタリア放送ミラノ交響楽団(一九六九年)
18 ハンス・マルクス・ゲッチェ指揮 ハイデルベルク室内管弦楽団(一九七〇年)
19 ルードルフ・マウエルスベルガー指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(一九七〇年)
20 ニコラウス・アーノンクール指揮 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(一九七〇年頃)
21 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(一九七一年)
22 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(一九七二、七三年)
23 ヘルムート・リリング指揮 シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム(一九七八年)
24 サー・ディヴィッド・ウィルコックス指揮 テムズ室内管弦楽団(一九七八年)
25 カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団(一九七九年)
26 ミシェル・コルボ指揮 ローザンヌ室内管弦楽団(一九八二年)
27 レイモン・レッパード指揮 北ドイツ放送交響楽団(一九八三年)
28 ペーター・シュライヤー指揮 ドレスデン・シュターツカペレ(一九八四年)
29 フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮 シャペル・ロワイヤル(一九八四年)
30 ニコラウス・アーノンクール指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(一九八五年)
31 濱田徳昭指揮 バッハ・コレギウム東京(一九八五年)
32 ゲオルク・ショルティ指揮 シカゴ交響楽団(一九八八年)
33 ジョン・エリオット・ガーディナー指揮 イングリッシュ・バロック・ソロイスツ(一九八八年)
34 グスタフ・レオンハルト指揮 ラ・プティト・バンド(一九八九年)
35 エーノホ・ツー・グッテンベルク指揮 ミュンヘン・バッハ・コレギウム(一九九〇年)
36 トン・コープマン指揮 アムステルダム・バロック管弦楽団(一九九二年)
37 クリストフ・シュペーリング指揮 新管弦楽団
【付記】
あとがき
バッハの神学蔵書一覧
《マタイ受難曲》パート譜一覧
《マタイ受難曲》の数象徴に関するマルティーン・ヤンゼンの説
バッハ以前の主な《マタイ受難曲》
文献目録
人名索引
《マタイ受難曲》対訳
· · · · · · (
收起)